ヒマの過ごし方帖。

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香取慎吾「ビジネスはパーフェクト feat.スチャダラパー」 ― ささやかな抵抗、そこはかとない"SMAPイズム"。【1月前半に聴いた音楽】

【1月前半に聴いた音楽】

香取慎吾「ビジネスはパーフェクト feat.スチャダラパー(※「20200101」収録)

 

僕が初めて香取慎吾のラップを聞いたのは「俺様クレイジーマン」という曲。1997年発売、SMAP10枚目のアルバム「011 ス」に収録。

くだらない つまらない やるきない

なんてとき だれにだってあるさ

うざったいボケナス めやにやろう

同じCDに「ダイナマイト」や「セロリ」の超ヒットシングルが入っているとは思えない痛烈な歌詞のアカペラからこの曲は始まる。"めやにやろう"に至ってはもう何に悪態をついているのかがわからない。汚い。そのあとにも『人生ゲームSETしてみたい』というフレーズがサラッと出てくる。この「人生ゲーム」が"いまの自分とは違う誰か"とか、もしくは"夢のような人生"とか、そういうものの置き換えだとしたらSETというよりは「RESET」に近いんだろうか。そうだとしたらSMAPの絶頂期に衝撃のパンチラインだけど、これはすべて本人の作詞。カウンター、体制に対する反骨、実直なヒップホップ。

 

香取慎吾のソロ曲にはラップモノがいくつかあるのだけど、SMAP時代のリリースで作詞が本人名義になっている曲は「俺様クレイジーマン」だけ(だと思う)。なので、「ビジネスはパーフェクト feat.スチャダラパー」は本人が作詞に携わったラップ曲という点で言うと、実に23年ぶり(アルバム「20200101」にはラップ曲が他にいくつもあり、これだけに当てはまる話ではないのだけれど)。

 

歌詞中、香取慎吾のヴァースで「P.B.I.」というワードが出てくる。ググったら「パーフェクトビジネスアイドル」と出てきて、本人が独立後から名乗ってるもの(らしい)。SMAP解散後も引き続き"アイドル"として見られてはいたい、でも仕事としてサッパリ割り切る。「俺様クレイジーマン」の頃から変わらないのは、"わざわざアイドルが言わなくてもいいことを言う"という体制に屈しない根底。自分で歌詞を書いてラップするアイドルはこの時代にいくらでもいるだろうけど、香取慎吾にしかできないヒップホップが体現できてる。カジュアルさの中にヒリッとするシニカルを織り交ぜるスチャダラパーのスタイルとも溶け合うようにマッチしてる。 

 

 

僕はSMAPが好きだ。解散後の彼らも応援する気持ちはあるけど、正直いまの5人ではSMAPの魅力には勝てない。でも、なんとなく"SMAPイズム"を残すこの曲もこのアルバム自体も、個人的に解散後の動きの中では一番嬉しいコンテンツだった。


そういえば、香取慎吾のアルバムの一週間後にリリースされた木村拓哉のアルバム「Go with the flow」の一番最後のトラックには「弱い僕だから」が収録されている。奇しくも・・・元々は1997年発売、SMAP10枚目のアルバム「011 ス」に収録されていた曲で、その再録。ファンながら運命を感じずにはいられないのだ。